北海道大学 先端生命科学研究院上原研究室

Uehara Lab, Faculty of Advanced Life Science, Hokkaido University

ゼブラフィッシュ胚における細胞分裂の光操作に関する研究のpreprint

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  • 2025年7月31日

北大電子研の玉置先生のグループと共同開発した、当てる光の波長に応じて分裂期キネシンCENP-Eの機能をon-off制御できる光応答性化合物を、透明なゼブラフィッシュ胚に適用し、発生過程のさまざまな時期に一過的な細胞分裂阻害を引き起こした際の個体への影響を調べました。このような高い時間分解能の解析によって、原腸形成期以降の胚が劇的な分裂制御障害に対して著しい耐性をもっていることを初めて見つけました。受精後5-12時間の間、全身的に、繰り返しの染色体分配異常を起こした場合にも、個体発生への影響は軽微に留まり、多くの胚が成魚にまで成長しました。さらなる検証により、この驚くべき分裂異常耐性は、原腸形成期から作動し始める分裂期チェックポイントによるエラー補正に依存することがわかりました。動物発生初期の分裂期チェックポイントは、エラー補正機能が不完全で、その生理的意義には不明な点が多かったのですが、今回の研究により、初期の不完全な分裂期チェックポイントによって数本の染色体分配異常を解消するか否かが、個体の生死に関わる違いを生むことが明らかになりました。

 

本研究は本ラボ博士学生の松浦暉さんが魚の水槽の組み立てから、実験系の立ち上げ、全実験解析の実施までを主担当して進めました。修士学生の細野美優さんも実験解析の一部を担当しました。また、上述の玉置グループ(玉置先生、現京都工芸繊維大 松尾和哉先生)に光操作実験や化合物合成でご協力と指導をいただき、北大理学部の小谷友也先生にトランスジェニック系統作製のご担当、基礎的な魚胚実験のご指導をいただきました。プレプリントはこちらから閲覧可能です。 **表示上authorの先頭にueharaの名前が掲載されていますが、本論文のfirst authorは松浦くん(Akira Matsura)です。