私の主な研究対象はがんです。がんは治療法の改善が強く望まれている病気です。同時に、がんについては生物学的に未解明な点が数多く残っています。
がんによる死者数
日本におけるがんによる死者数は、近年右肩上がりで増えています(図)。これは日本に限ったことではなく、世界中の国でがんは深刻な問題となっています。そのためがんの治療法の改善が強く望まれています。
がんの発生と進行
(1)腫瘍の発生
がんは正常な細胞の中からがん細胞と呼ばれる異常な細胞が発生することにより生じます。がん細胞は無限に増え続ける能力を持った細胞です。がん細胞は際限なく増えるため、やがてがん細胞の塊である腫瘍をつくります(図)。
がん細胞が当初発生した場所で増えているのみの場合、その腫瘍は良性腫瘍と呼ばれます。良性腫瘍は患者さんにとって大きな問題にならないことが多いです。問題はがん細胞が元の場所にとどまっていない場合のときです。
(2)がんの浸潤、そして転移
がん細胞の中には周囲の組織を壊してその中に広がっていくものがいます。この現象を浸潤と呼びます。浸潤が体の重要な臓器(脳・肺・肝臓など)で起こると、患者さんにとって重大な問題となります。
また、ある種のがん細胞は当初発生した場所から遠く離れた場所に移動し、そこで新たに腫瘍をつくります。この現象を転移と呼びます。転移が起きた臓器が体の重要な個所である場合も、患者さんにとって大きな問題となります。
このように、浸潤・転移はがんという病気におけるやっかいな特徴です。なぜがん細胞は浸潤・転移することができるのでしょうか?これは生物学的にも大きなトピックです。私はこれらの現象が起きる仕組みを解明し、がん治療の改善に貢献したいと思っています。