メッセージ
今、地球上にいるすべての多細胞生物の姿は、微生物との戦いに打ち勝ってきた証です。植物も動物も、自然免疫のエフェクターとして抗菌ペプチド(Antimicrobial peptides)を持っています。哺乳類に属する人間も例外ではありません。抗菌ペプチドは、進化の道筋をたどってきた多細胞生物の遺伝子にコードされた殺微生物因子です。
私たちは、感染刺激を受けた小腸のPaneth細胞という腸管上皮細胞が、抗菌ペプチドであるα-defensinを分泌し、その強力な殺菌活性で感染防御に貢献していることを明らかにしました。自然免疫のはたらきは、微生物認識分子や抗菌ペプチドの重要性が明らかになるに伴ってますます注目されていますが、それらが実際にはたらいている「粘膜」という場における分子機構や機能は今でもまだよく分かっていません。消化管は、あらゆる粘膜組織のなかで最も微生物感染の危機にさらされている最前線であり、自然免疫が大活躍しているはずだと私たちは考えています。この活躍を解明するのが自然免疫研究室の大きな目標です。
自然免疫研究室では、消化管粘膜における自然免疫の制御に関わる分子の構造と機能を、腸管上皮細胞を中心に据えて解析しています。微生物と腸管上皮細胞の接点や、腸管上皮細胞と貪食細胞やリンパ球とのクロストークを理解することによって、感染症や難治性免疫疾患の病因や病態を自然免疫の視点から解明することを目指しています。さらに、抗菌ペプチドの実用化をはじめとした新規治療法の開発までを目標として研究を展開しています。
私は、腸からみれば食品も医薬品も同じだと常々考えています。私たちの身体をつくっている“食”の機能を“腸”から明らかにすることは、健康とは何かを科学的に理解することに他なりません。「医食同源」のメカニズムを知りたいのです。このことによって、クローン病や潰瘍性大腸炎の患者さんや肥満、メタボリック症候群患者さんの新しい治療法開発、さらには予防医療に貢献できると考えています。
私たちは、一緒に挑戦する仲間として博士前期(修士)課程、博士後期課程の大学院生を広く求めています。これまでの専門領域にかかわらず、興味をもった方はまず連絡してください。お話しできるのを楽しみにしています。