七月十五日 雨のち晴
昨夜はぐっすり眠って七時に起きる。雨が降っていた。拓海、今朝は熱も下がって元気に起きてきた。十時から、南菜子は勉強、私も側で日記を書く、又、お父さん、どんなにか心配しているだろうにと手紙を書き、拓海と二人で近くのポストへ投函する。十一時過ぎ、政孝さんが車で迎えに来て、カロリンスカ研究所の食堂で昼食をたべる。
カロリンスカ研究所には、広大な敷地内に政孝さんが、務めている研究所の他、七つの病院と分校があるとのこと。食堂の周りだけでもレンガ作りの建物が何棟も建ち並んでいる。帰りは、政孝さんが毎日自転車で通る道を、南菜子と、私と、美子は、拓海の乳母車を押して、道々の風景を眺めながら四人で歩いて帰る。
途中カロリンスカ病院の小高い庭に、林檎の木が沢山あって握りこぶしほどの青い実がをたわわになっていた。いったん帰宅してひと休み。今度は、南菜子は友達と遊ぶというので、拓海と三人で十分ほどバスに乗り、ストックホルムのメーンストリートと言われるスベアベーゲン(スウェーデン通り)にでかけた。
そのバスは、乳母車を押している人は無料、また一度切符を切ると一回降りても一時間半位ならば帰りのバスは、その切符が利用出来ると言う便利さである。 スウェーデン通りは、人通りも賑やか。街並みの建築様式も北欧型で、百年以上も経っていて、色彩もカラフルで異国情緒を強く印象づけられた。その中にも、ひと際目立って ノーベル賞の受賞式場となる有名なコンサートホールがあった。
その前にはヒョートリエット広場があり季節ごとに、いろいろな野菜や果物・花などが露天に並んで野外市場となり大勢の人々で賑わうとのこと。今日もたくさんの人だかりだった。果物を買って帰宅する。
七時すぎ政孝さん帰宅、今夜気球を上げるというので、急いで夕食をたべ、カクネス塔(スカンジナビア半島で一番高い塔)の建っている広場へ車でいそぐ。そこは広々とした草原で大勢の人が集まっていて、既に二つ気球が空に舞いあがっていた。更に奥の方にもう一つの気球があり、人が沢山集まっているのでいってみた。
政孝さんが、聞いたところによるとスウェーデン人で、丁度今から百年前の今日、北極へ気球で飛んだ人がいて十年前、北極でその人の遺体と記録が見つかったとのこと。今日はその百年前の記念日なので気球を飛ばそうとしている、との話。私達もそれを見ようと九時半まで待ったが、一向に飛び立ちそうもないので帰ることにした。ちょうどまっ赤な美しい夕焼け空だった。
スウェーデンの人々はまだまだ帰りそうもない。それから果して飛んだのだろうか……………。 本当に忘れられない思い出の一駒となった。
(これは別の時の気球の写真、写っているのはストックホルムにまで遊びに来た友人 政孝)