マクロフォミン酸合成酵素 ツユクサの葉から単離された糸状菌は, MPS(macrophomate synthase)を用いて2-ピロンから安息香酸誘導体マクロフォミン酸への珍しい変換を行い, その過程において炭素―炭素間協奏的付加反応を経由する. 具体的にMPSは,オキザロ酢酸が脱炭酸して得られるエノラートと,2-ピロンが反応炭素―炭素結合を形成した後, 一旦,架橋型中間体を形成し,次いでアリル転移,ラクトンへの再環化によってマクロフォミン酸を生成する, 五段階もの反応を触媒する.我々の研究室はMPSを分解能1.6Åで構造解析することに成功した. 本研究では,構造をもとにこの酵素触媒について,反応メカニズムを解明し,新たな工業的利用を目指している. |
ACCデアミネース(ACCD) ACC(1-アミノシクロプロパン-1-カルボキシレート)デアミネースは, 環状アミノ酸ACCを脱アミノ化し,α-ケト酪酸とアンモニアに分解する酵素で, ピリドキサール5'リン酸(PLP)を補酵素とするPLP酵素の一つである. PLP酵素による脱アミノ化反応の場合,アミノ酸のCα-α水素間の結合が切断されることから脱アミノ化反応が進行する. しかし,ACCデアミネースによって脱アミノ化されるACCは,他のアミノ酸と異なり, 環状構造を形成しているため,α水素をもたない. つまり,ACCデアミネースによって触媒される脱アミノ化反応は, 他のPLP酵素による脱アミノ化とは異なる機構で進行していると考えられる. したがって,我々はACCデアミネースの立体構造から,反応機構を解明することによって, Dunathanの仮説を証明することができると考えている. 現在,以下の研究が行われている. ・酵母由来ACCデアミネースの構造解析 ・酵母由来ACCデアミネースの変異体の構造解析 ・ACCデアミネース類似タンパク質の構造解析 |