話題のES細胞から神経を作る
これが4つめの研究テーマです。
私たちの研究室では、幹細胞、とくにES細胞から神経を作ろうという研究を行っています。ES細胞、すなわち胚性幹細胞というのは、iPS細胞と共にあちこちのマスコミにも取り上げられているのでご存知の方も多いと思いますが、あらゆる細胞に分化することができる細胞のことです。私たちはこの幹細胞から「神経を作ろう」ということを目指しています。
というのも、神経はほぼ再生しない細胞だからです。他の細胞は自分たちで修復できるのですが、神経は一部の神経細胞を除き、補充も修復もされず、基本的には減る一方なんです。たとえば脊髄を損傷すると、自然治癒は難しいですよね。でも、幹細胞を使って神経を作ることができれば、神経系の病気や怪我を治せるようになるのではないかと希望を抱いて世界中の研究者が取り組んでいます。ただし、幹細胞から神経細胞を作るのは、すごく難しいんです。
細胞本来の能力を引き出すには
私たち第3研究室では、細胞というのは硬い基盤で培養しちゃ駄目だろうと考えています。実は細胞には、自分はいま硬い地べたにいるのか、軟らかいふかふかのベッドに居るのかがわかるセンサーがあって、実験室でも生体内に近い環境にしてあげれば細胞本来の力を発揮できるようになるのではと考えています。それはES細胞もしかりで、軟らかい環境で培養してあげると本来の能力を発揮して、神経になりなさいという刺激を与えると、ちゃんと神経になってくれるということが分かってきました。
上の画像がガラスの上で培養した時のES細胞、下の画像がゲルの上で培養した時のES細胞です。赤い色は神経になった細胞を表します。神経の突起を伸ばしている状態ですね。神経細胞を作りたくても、硬いガラスシャーレの上で培養すると、ぜんぜん違う細胞になっちゃうんですよ。それが、軟らかい環境で少し薬を加えてあげるだけで、神経に誘導できるということが分かってきました。これは今、ラボ内ではかなり研究が進んでいるのですが、ここでお話するには学会、もしくは論文の発表を今しばらくお待ちください(笑)。
以上が、私たちが第3研究室で行っている研究内容の概要です。
ありがとうございました。
――研究成果を楽しみにしています! ありがとうございました。