RNase MC1 植物由来のRNaseはその機能やアミノ酸配列の類似性により,S-RNase,S-like RNaseの2つのサブグループに大分される。両者のアミノ酸配列には類似性が見られるが、その機能は全く異なり、前者は配偶体型自己不和合性に関与する糖タンパク質で、自己由来のRNAに作用することで花粉管伸長を阻害する。本研究で取り扱っている後者は、乾燥、老化、傷害、病原体の感染等のストレス、種子の発芽や成熟、リン酸飢餓等の環境変化に応答して植物体内に誘導される生体防御因子であることが提唱されている。 ニガウリ(Momordica charantia)由来のRNase MC1は、種子の発芽や成熟の際に植物種子内に誘導される酵素で、他の植物由来RNaseとは異なりRNA鎖中のウラシル塩基(3'側)のみを特異的に認識し、その一つ前(5'側)の塩基との間に存在するホスホジエステル結合を切断する。 現在までに、基質類似体として2',3'-uridine-monophosphate(UMP)を用いたMC1の1.48、1.77A複合体構造解析より、本酵素の塩基認識に関与する4つのアミノ酸残基を特定している。MC1は、Leu73、Phe80によるsandwich-stacking、ウラシル塩基のO4、N3原子とGln9、Asn71およびMC1主鎖により形成される水素結合によって4種類存在するRNAの塩基からウラシルのみを選択する。 |