ポストゲノムタンパク質解析イノベーションハブ(旧センター)

リボソーム生合成の関連因子Rrf2-Rrs1

真核生物のリボソームは約80個のリボソームタンパク質と4個のリボソームRNA(25S、18S、5.8S、5SrRNA)から構成されている。このリボソームの生合成は核内で始まり、前駆体pre-90Sが形成される。その後、2つのサブユニット前駆体pre-60S、pre-40Sへと分かれ、核外へと輸送される(図左)。そして、細胞質での最終成熟を経てリボソームサブユニット60S、40Sが完成する。タンパク質Rpf2とRrs1は核内で3つのリボソーム構成成分(5S rRNA、RpL5、RpL11)とRpf2-subcomplexを形成し,その3つの成分をpre-90Sへと取り込む、pre-90Sの成熟そしてその後のpre-60Sの成熟のチェックポイントの働きをしている。私たちはRpf2-Rrs1二者複合体のコア(N末ドメイン)の構造解析に成功した(図右上)。得られた構造および生化学実験を元に、Rpf2-subcomplex、更にリボソームとの結合モデルを作製した。このRpf2-Rrs1のコア部分はpre-90Sと5S rRNA、RpL5、RpL11をつなぐアダプターとしての機能をもち、pre-90S上で他の生合成関連因子の取り込みを行う、足場タンパク質複合体であると考えられる。

リポソーム生合成

 

図.リボソーム生合成とRpf2-Rrs1複合体

NMR構造生物学研究室

生体内で種々の重要な機能を果たすタンパク質は柔軟にその立体構造を変えながら機能している。細菌の細胞壁合成に関わるタンパク質酵素であるMurDも大きくその立体構造を変化させながら機能していることが知られていたが、その詳細は明らかになっていなかった。我々は常磁性ランタニドプローブ法を用いた核磁気共鳴法(NMR法)によってMurDの立体構造をモニターし、低分子基質の結合や酵素反応の進行に伴ってどのようにMurDの立体構造が変化しているのかを詳細に観察することに成功した。常磁性ランタニドプローブ法ではタンパク質に固定したランタニドイオンによって誘起される常磁性効果を定量的に解析することによって40Åという長距離間での情報を取得し、MurDの全体像を迅速に把握することができる。本研究ではMurDの立体構造が開状態と閉状態の中間に位置するsemi-closed状態が存在することを初めて明らかにし、さらにこのsemi-closed状態が基質結合の順序を決定する上で重要であることを示した1。MurDは抗菌薬の新たな作用点としても注目を集めていることから、本研究の成果は新規薬剤開発への展開も期待される。

NMR構造物

図の説明

リガンド結合に伴うMurDの構造変化とPCSによる構造変化の検出
MurDは基質の結合と酵素反応の進行に伴って大きくその立体構造を変化させる。我々は常磁性ランタニドイオン(Ln3+)をタンパク質に固定し、常磁性効果の一つであるPCSの変化を観察することによって立体構造変化を詳細に解析することに成功した。

1. Ligand-driven conformational changes of MurD visualized by paramagnetic NMR.
Saio T, Ogura K, Kumeta H, Kobashigawa Y, Shimizu K, Yokochi M, Kodama K, Yamaguchi H, Tsujishita H, Inagaki F.
Sci Rep. 2015, 5, 16685.